
原模
劉 鋭
2025年6月14日(土)– 6月22日(日)
13:00 - 19:00
*月曜休館
主催| ARTiX³
共催| 一般社団法人 日本国際文化芸術協会
会場| 〒110-0003 東京都台東区根岸3丁目13-1


原模
フランス在住のアーティスト·熊秉明(ユウ·ヘイメイ)の父であり、中国の著名な哲学者でもある熊十力(ユウ·ジュウリキ)は、その哲学的主著に『原儒』を著しました。彫刻においては、粘土原型が完成した後、それを硬質な素材に置き換える工程が必要となります。このとき最初に作られる型を中国語で「籽(Zier/ズィアル)」、すなわち「原模(げんも)」と呼びます。この原模からは無数の彫刻を複製することが可能ですが、イギリスの美術市場においては、原模から7点以内で鋳造された作品のみが「オリジナル」と認められています。
—— 劉 鋭(リュウ·ルイ)
©️Liu Rui
熊十力(ユウ·ジュウリキ、中国の哲学者)は晩年、儒学の本源を遡り、儒家形而上学における道徳的「本体」の分析を通して原点に立ち返りつつ新たな展開を図り、現代的な儒学体系の再構築を試みた。それが『原儒』である。彫刻の制作においても、まず粘土原型を創作し、それを石膏で複製した初期モデルを経て、最終的に硬質な素材に置き換えられる。「石膏原籽儿(ズィ·アル)」は、彫刻における最初のオリジナルモデルであり、そこから無数の作品が派生し得る根源的存在である。これが「原模」である。おいて最終的な作品を複製する際の最初の型である「原模」に由来しており、形と精神の転換の起点を象徴しています。「原模」は単なる制作技術の出発点であるにとどまらず、思想·感情·生命の原初的な状態を暗示するものです。本展は、具象から抽象へと向かう劉鋭の創作の進化を示すとともに、「精神の源」と「形式の根本」に対する彼女の持続的な問いかけを映し出しています。
劉鋭は、中央美術学院での教育を受け、当初は複雑な構造と高度な技巧を重視した作品を制作していました。その後、ロシアのレーピン美術アカデミーやフランス極東学院でさらに学び、古典的な理性と現代の哲学的視点を融合させた独自の造形言語を築いてきました。近年は、極めて簡素かつ内省的な方法で生命の体験を伝えることに注力しており、生と死、永遠と輪廻といった根源的なテーマに向き合う彫刻を通して、深い洞察を表現しています。
本展では、すべての作品が新作で構成されており、例えば息子の誕生を記念して制作された《赤子の金の足》、宇宙の三重構造を象徴的に示した《マニ塚》、軽やかな色彩の中に生命の力を宿す《泉》など、感覚的な経験を見事に形象化する彼女の力が際立っています。
また、劉鋭は儒教の「天人合一」の思想や、熊秉明の美学から強い影響を受けており、形式と精神、物質と思想との間に張り詰めた緊張関係を構築しようと試みています。彼女にとって彫刻とは、視覚芸術であると同時に、感情や信仰、そして精神の再生を内包する器でもあります。「原模」というメタファーを通じて、創作そのものを祈りの行為として捉え、作品を単なる視覚的存在にとどめず、観る者を形象の彼方へと導き、生命の原初的なエネルギーと精神の響きへと触れさせようとしています。
—— ARTiX³
アーティスト:
劉 鋭(リュウ·ルイ)
1976年、天津生まれ。
1993年に中央美術学院付属中等美術学校に入学。
2003年、中央美術学院彫刻科·曹春生研究室を卒業。
現在は北京在住。
副教授。中国城市彫刻家協会理事、中国青年彫刻家創作センター会員。
2010年にはロシア·サンクトペテルブルクのレーピン美術学院にてシニア客員研究員を務める。
2011年にはフランス·パリの極東学院にてシニア客員研究員。
造形言語による現実的表現の探求に力を注ぎ、作品はたびたび中国の省·部級以上の美術展覧会に入選し、中国美術館をはじめ、ギャラリー、個人コレクターに所蔵されている。
